炊飯器

炊きすぎた。

結論から言えば米を計り間違えてもそう慌てることはない。

以前から俺はよく米の炊飯のトラブルに見舞われてきた。例えば、2合なのに3合の水で炊いてしまい、カレーをお粥で食べる羽目になったことがある。あと、3合のお米を2合の水で炊いてとても硬いご飯でこれまたカレーを食べることになったこともある。しかし、今回のトラブルはすこし毛色が違っていた。3合炊きの炊飯器に対して4合の米を投入してしまったのだ。

俺はぼんやりしながら計量カップを用いて米を計りとっていたが、ふと気づくと自分が何合米を計ったのか分からなくなってしまった。しかし、3合用の水のラインが見えていたため問題ないと判断し、洗米フェーズへ移行した。ところが、洗米中に米が水を吸ったのであろう、目に見えて米の量が多すぎるのである。やむを得ず俺は洗米を一時中断して米をすべて計量カップでもう一度計ることにした。そうするとどうだろう、明らかに4合を上回る米がそこには存在していたのだ。もちろん4合を越えているのは水のせいだろうが、4合ですら炊飯器の容量を明らかに上回る。俺は怖気づいて嫁に
「1合だけ炒めて先に食うか」
と相談した。しかし、彼女の返答は技術立国日本に対してあまりにも重心をおいたものであった。
「日本の家電製品がそこまでギリギリに作られているわけないでしょ」
とはいえ俺もそう言われてみれば何となく大丈夫な気がした。付け加えると、俺は外にでる用事もあった。そこで俺はあっさりその提案に乗り、タイマーをかけて外出した。ただし、水が少なすぎるので3合よりも多めに水を入れておいた。

数時間後、俺は家に帰り炊飯器を開けた。なんと、米はごく僅かに内蓋に付着していただけで、ごく真っ当なお米が炊けたのであった。俺は日本の技術力に満足し、バタ丼を2合分食べた。