運賃計算について:特定都区市内篇

特定都区市内制度とは特定都区市内に指定された範囲内の駅と、当該範囲の中心駅との距離が200kmを超える*1駅との相互運賃は特定都区市内中心駅を利用して計算する*2

謎1. 何を基準に200kmを超えるのか?

Wikipediaには、杉本町から大高に行く例が挙げられている。杉本町から中心駅である名古屋へ同じ経路で移動する場合のキロ程も大阪から大高のキロ程も200kmを超えるので特定都区市内制度を適用されるという話である。ちなみにどちらを適用するかは乗客から特に求めがない限り、前者のように着駅側に特定都区市内制度を適用させるそうだ。

謎2. 中央駅まで200kmとはつまりどういうことか?

よろしい、名古屋市内駅へ行くときは、名古屋駅までが200kmを超えていればこの制度が適用されるらしい。ところで、名古屋市内の駅はグラフ理論で言う木で構成されている。木とは「閉路のないグラフ」であり、要はある地点からある地点への経路は一意に特定できるのである。つまり、東海道下り側を入口駅としても、中央西線で入っても、名古屋駅への行き方は一意であり、「どうやって名古屋駅へいけばよいか」を迷う必要はない。
しかし、特定都区市内全てが木であるわけではない。東京都区内がその最たる例である。山手線と中央線でループが構成されているのでこれは難しそうである。つまり、西荻窪まで中央線で来る経路が200kmを超えるかどうかは、東京都区内の経路に依存してしまうという事である。しかし、これは電車大環状線という制度によっておそらくは解決する。要約すると、着駅が電車大環状線の範囲内(東京都区内から枝を刈ったような形である)であれば途中下車しない限り経路を選択できる、つまり最安の運賃で計算できる*3ということになる。
これで全て解決…とは行かない。横浜市内と大阪市内にも同様に閉路が構成されている部分がある。このうち、天王寺-大阪は経路特定区間*4なのでいいとして、横浜市内において東海道上り・南武線から南武支線鶴見線を利用するか素直に東海道を利用するかで同一入口にも関わらず経路が異なることになる。同様に大阪市内でも京橋から大阪へ天王寺を通るか通らないかで異なる経路ができてしまう。例として東北本線の黒磯より1駅先にある高久駅から横浜市内駅へ行く際に、東北・東海道で行った場合は中心駅(横浜駅)までの距離は196.1kmであるが、東北・東海道・南武・南武2・鶴見・東海道で計算すると204.1kmである。つまり、入口駅が同じ川崎であるにも関わらず、経路の計算によって中心駅までの距離が200kmを超えるかどうかが変動してしまうのである。これを確かめるべく運賃オタクの一つの達成点であるとも言えるSWA ソフトウェア倉庫のMARS for MS-DOSを用いて計算したところどちらも単駅指定されていた。つまり、特定都区市内制度を適用しないという立場をとっているわけである。しかし、あくまで鉄道ファンの作ったソフトの結果をもって議論することはできない。やはり、JR自身がどのような基準でこの問題を解決しているのかが知りたい。

あと東京都区内-東京都区内に関して

今度は本家であるJR東日本:旅客営業規則>第2編 旅客営業 -第3章 旅客運賃・料金 -第2節 普通旅客運賃を参照してみると次のような規定が書いてある。

第86条
(前略)ただし、特定都区市内にある駅を発駅とする場合で、普通旅客運賃の計算経路が、その特定都区市内の外を経て、再び同じ特定都区市内を通過するとき、又は特定都区市内にある駅を着駅とする場合で、発駅からの普通旅客運賃の計算経路が、その特定都区市内を通過して、その特定都区市内の外を経るときを除く。
JR東日本:旅客営業規則>第2編 旅客営業 -第3章 旅客運賃・料金 -第2節 普通旅客運賃

分かり難いが、例でいうと「東京都区内から一旦外に出てもう一回東京都区内を通過してもう一回外に出る切符の時」は単駅指定されるということだ。例えば、東京から総武・武蔵野・常盤で日暮里まで戻ってきて青森に行く切符は単駅指定されるということである。しかし、この強調した部分から想像できるように、東京都区内を出発して遠くへいき、もう一度東京都区内へ帰ってくる切符は東京都区内-東京都区内になってしまう。通過するわけではないから、というわけだ。やれやれ。

最後に

という訳でご意見お待ちしております。

*1:200km以上なのか201km以上なのかは疑問

*2:特定都区市内 - Wikipedia

*3:逆に言えばちゃんと額面通り支払うこともできるようだが、おそらく業務上そのような扱いはされないだろう電車大環状線 - Wikipedia

*4:経路特定区間 - Wikipedia